突撃!目利きインタビュー!!

今年のシブカル祭。で全力女子たちを応援してくれる
“目利き”の皆さんにスペシャルインタビュー!
あんな人からこんな人まで、目利きから読み解くシブカル祭。2013!!!

第3回 古屋蔵人さん/編集者、ディレクター

13 10.09 UP

プロフィール

1981年東京生まれ。編著書に「映像作家100人」など多数。Webや映像ディレクションも手がける。ディレクターとしての近作は森翔太と共に監督した「ILC脊振ハイスクール!」、環ROYの「YES」「ワンダフル」など。

Q1
今回の「シブカル展。at パルコミュージアム」に目利きというかたちでご参加いただきましたが、シブカル祭。のことはご存知でしたか?
A1
去年のシブカル祭。のアートディレクションをしていたNNNNYのいすたえこさん絡みで知りました。参加者にも元々知り合いが多かったです。こんなにたくさんの女子クリエイターを束ねた企画って他になかったし、しかもそれがパルコっていうメジャーなハコでっていうところが面白いなと思いました。
Q2
古屋さんには3名の女子クリエイターを推薦いただきました。それぞれご紹介いただけますか?
A2
まず、大島智子さんはネット界隈ですごく注目されているんですけど、その良さがなかなか商業とは離れたところにあって。ネットならではの消費のされ方で、かつ上手い下手の領域じゃない。いままでの文脈で語ることができない良さがある。大島さんが作るGIFアニメは、2、3コマくらいしかなかったりして一見雑なんだけど、あのむき出しな感じに彼女しか出せなくて、その何かがすごく2010年以降っぽいんです。


GIF Animation(2012~2013)/©Tomoko Oshima

ぬQさんは逆に時代感覚が全くなくて、わけわかんない世界観が広がっていて、本人もかなりぶっとんでる(笑)。元々イラストの方なんだけど、映像作品としては一作目の『ニュ~東京音頭』なんて、今までのアニメーションの文脈とは関係ないところで、勝手に作っている感じですね。この作品は一年くらいかけて作ったみたいで、そんな時間の使い方出来るひとは、なかなかいないんじゃないかな。ウェブサイト(http://homepage3.nifty.com/nuQ/)も面白くて、独自の方法でインターネットを愛している人なんだなぁって。


「ニュ〜東京音頭」(2012)/アニメーション,5分,©ぬQ

若井麻奈美さんは、3人の中ではわりとオーソドックスなやり方でアニメーションをやっている人です。ちゃんといままでの映像文脈を観てきて至っているけど、今っぽいというか、実際はどうか知らないですけど。『映像作家100人』(2013,ビー・エー・エヌ新社)を編集しているときに若手の作家を探していて、出会いました。そのときたまたま僕のオフィスの近くで若手映像作家の展示をしていて。そのときいいなと思ったのが、若井さんと先程のぬQさんです。


SANKAKU(2010)/アニメーション,4分45秒,©若井麻奈美

3人に共通しているのは、とにかく「勝手に作っている」感じですね。男性のクリエイターって、一概には言えないけれど、わりと社会とコネクトしたがるところがあると思うんです。タイムラインでウケそうとか、お金になりそうとか、でも、シブカルに参加している女子たちって、自分が作りたいものを、作りたいように作っているみたいな感じ。それ面白いところかなと思います。

Q3
今、古屋さんは映像の分野でご活躍されていますが、そこに至るまでのルーツを教えていただけますか?
A3
ちょうど僕が大学生の頃に、会社に所属せず個人で名前のたったグラフィックデザイナーが増えてきた頃で、グラフィックをまとめた本を作りたいと思って『SIM Magazine』という本を自費出版したのが編集者になるきっかけです。
それから5年で今度はMacのスペックが上がって個人で映像を作れるようになってきたら、今度は個人の作家が増えてきて、今はプログラマーやメディアアーティストが目立っていたり。僕が知るグラフィックデザインブームの以前にはタイポグラフィブームがあったし、なんとなく5年周期みたいな感じで。僕自身は8年前に「映像作家100人」っていうシリーズを立ち上げた縁で、今は割と映像とかデジタルコンテンツ自体を作るようになりました。
Q4
今は映像中心のお仕事をされている古屋さんから見た、今の東京のクリエイティブシーンにおける映像という分野についてどう思われますか?
A4
本ってやっぱり前と比べて売れなくなっていて、確実に売れるものを出すって感じで保守的になっていて、その保守でまたファンを失っている面もある。デジタルコンテンツは本と比べるとまだまだ初期衝動で作られている部分があるから、荒削りでも見せ場があれば成立するし、なにより製作期間も短くて、発表までのタームが早い。そのスピード感が楽しいです。
Q5
映像を作るとき心掛けていることはありますか?
A5
大島さんとか、ぬQさんとか、若井さんには最初から作家性を考えた上でのオファーがいくと思うのですが、僕は作家性というよりオファーに対するアンサーをどう返すかです。世間にコネクトしつつ、ちょっとズラしたい、でもなるべく見る側にサービスしたいとか、邪念だらけで作ってますね。
逆にそういうことを、この3人はそこまで気にしてないと思うんですよね。気にしてるとしても、もっとタイムラインに向けているとか、自分に近い表現者に向けてたり、もうちょっとパーソナルだと思うんです。そこが観てる側も楽しいですよね。
Q6
若い女子クリエイターに何かアドバイスはありますか?
A6
女子とか関係ないですが、映像作家さんは時間かけまくって一つの作品を作るくらいのスタイルのほうが勝ちなのかなと思います。チェコのストップモーション作家みたいな。もういっそ、3年くらいかけて作って、忘れられたころにぽんと出す。ためてためて…みたいな。そういうのもいいなと思います。って他人の人生にめっちゃ勝手なこと言ってますけどね。首都圏に不向きな制作スタイルかもですが、鑑賞する側の要望としてはそんな感じです。